ウィーンフィル ニューイヤーコンサート(2018年)覚え書き

うちは新年の夕食の時にウィーンフィルのニューイヤーコンサートを見る習慣があります。

と言ってもニューイヤーコンサートが始まるのはウィーン時間の午前中11:15ですから私は毎年、年末から年明けにかけては大晦日や元旦も仕事をしますのでニューイヤーコンサートの時は観光しています。

そのため録画しておいたものを夜見るわけですからLIVEで見ているわけではありません。

個人的にニューイヤーコンサートは過去LIVEで見たこともありますが、御存知の通りチケットの値段だって普通のコンサートよりも正規価格でも遥かに高いですし、入手困難ですからね・・・。

でも毎年11月ぐらいから地元の色々なチケット取り扱い業者から「うちはニューイヤーのチケットが数枚あるから行きたい人がいれば売れますので連絡下さい」というような電話やメッセージが私の所に届きます。

でもその時の提示価格は正規価格よりも倍ぐらいの高さになっています。

そのような業者ルートから数枚であれば比較的簡単にチケットは入手できますので行く気になればほぼ確実に行けますが、価値観の問題ですからね。

2.000ユーロ以上を一枚のチケットに払うか・・・ということですね。

チケット業者によれば今年は例年と比べると、ニューイヤーコンサートのチケット入手が難しいと言われていました。

 

さて、テレビで見るニューイヤーコンサートはおもしろいです。

途中に色々な演出があり、会場では見ることができない映像が見られます。

今年のニューイヤーコンサートについての感想を少し書きたいと思います。


今年もニューイヤーコンサートはリンク道路付近を上から見た映像から始まって、シュテファン大聖堂が最初に登場し、カメラが移動してホテルインペリアル、そして楽友協会ホールの建物が映し出され、この正面入り口の扉が開いて視聴者も中に入って行くような演出で始まりました。

 

会場を舞台に向かっての映像から始まりましたが、何と言っても印象的だったのは飾られている花がとてもカラフルでした。

この花が幾度となくアップで登場しました。

去年は話題性たっぷりのGustavo Dudamel(グスターヴォ・ドゥダメル)というベネズエラ出身の指揮者で、彼は35歳、ニューイヤーコンサートの歴史では一番若い指揮者でしたが、今年は対照的にナポリ生まれ76歳の巨匠Riccardo Muti(リッカルド・ムーティー)でした。

ムーティとウィーンフィルの関係は長く、ムーティはウィーンフィルの名誉団員にもなっていて、ニューイヤーコンサートを振るのは過去1993年、1997年、2000年、2004年と今年5回目です。

 

今年の1曲目はワルツ王ヨハン・シュトラウス(2世)の喜歌劇ジプシー男爵から入場行進曲でした。

テレビで見ている限りでは76歳の割には若く見えたムーティでした。

ウィーンフィルとムーティ・・・お互いに音楽性を知り尽くした一体感を感じました。

すでにヨーゼフ・シュトラウスの2曲目にはお茶の間の皆さんが楽しめる映像が登場し、美術史博物館と自然史博物館があるマリア・テレジア広場が空から映され、リンク道路を超えて、左の英雄広場に位置する新王宮でカメラが止まりました。

ここにはオーストリア国立図書館がありますが、国立図書館は今年650周年記念を迎えました。

その後国立図書館のプルンクザールが映像で登場しました。

ここは仕事でかなり頻繁に訪れる所で、個人的にも大好きです。

さらにここのLiteraturmuseum,、Augustiner Lesesaalも登場しました。

この2曲目が終わった拍手の時に、会場にいたオーストリアの新しい首相であるSebastian Kurzさんの姿が映されました。

ヨハン・シュトラウス(2世)、シュトラウス(父)、ヨーゼフ・シュトラウスでの前半6曲が終わった後休憩時間に入ります。

 

この間にお茶の間に流される映像が毎年評判がいいんですね。

今年はAugustiner Lesesaalで勉強している女子大生が主役で、そこから抜け出して自転車でウィーンの街を回ります。

Augustiner Lesesaalは王宮ですが、彼女が出て来る所は美術アカデミーから撮影されています。

カールス教会前、国立オペラ座前、楽友協会前、リンク道路を走り郵便貯金局へとやって来ます。

これはオットー・ヴァーグナーの3大傑作のひとつと言われています。

オットー・ヴァーグナーが亡くなったのは1918年です。

その後彼女はまた自転車で街中を走り抜けますが、Karlsplatzのパビリオン、Stadtbahn(シュタットバーン)市立公園駅メダルの家、マジョリカハウスアム・シュタインホーフ教会も登場します。

かつてのLänderbankの優雅な空間・・・ここまで全てオットー・ヴァーグナーです。

その後はベルヴェデーレ宮殿のクリムトコーナー・・・クリムトも1918年に亡くなっていますね。

再びオットー・ヴァーグナーのドナウ運河Schützenhaus、レオポルズベルクからのウィーンの眺めからNussdorfer Wehr und Schleuseanlageが登場です。

その後はMQにあるレオポルド美術館で、エゴン・シーレです。

シーレも1918年に亡くなっていますね。

最後は夕暮れのウィーンの街が空から映し出されています。

ウィーンの代表的なユーゲントシュティールがテーマになりました。

今年2018年は1918年にこのような方が亡くなった100年記念の年、そしてハプスブルグ帝国が崩壊するのもこの年ですから、これは運命的な時代の節目としか言いようがありません。

 

 

後半はフランツ・スッペのオペレッタボッカチオからの序曲で始まり、次の曲はヨハン・シュトラウス(2世)のMyrthenblühten Walzer op.395 (ミルテの花ワルツ)はフランツ・ヨーゼフ1世とエリザベートの長男ルドルフ皇太子とベルギー皇女シュテファニーの結婚を祝う曲で、これをバックにアウガルテン工房が登場しました。

アウガルテンはウィーン磁器工房として1718年に設立され、今年300周年を迎えます。

その後、オーストリア=ハンガリー帝国時代の作曲家Alphons CZIBULKA(アルフォンス・ツィブルカ)のシュテファニー・ガヴォットが演奏されますが、この曲も前述した結婚祝いに作曲されました。

この曲をバックにシェーンブルン宮殿界隈にあるHofpavillon(フランツ・ヨーゼフ1世専用に作られた皇帝駅舎)でバレエが披露されました。

これもオットー・ヴァーグナーです。

この後2曲目にはウィーンの森の物語が演奏され、女性のチター奏者が舞台に登場し、ウィーンの音を聞かせてくれました。

この時にはウィーンの森の秋の様子が、名所と共に美しい映像で紹介されました。

 

ヨハン・シュトラウス(2世)のRosen aus dem Süden op.388(南国のバラ)が演奏され、この時には Eckartsau城でのバレエが流れました。

この場所はハプスブルグ帝国最後の皇帝カール1世とツィタ皇后が一切の事から手を引いた後に住んだ所です。

2018年ニューイヤーコンサートのオフィシャルな最後の曲はヨーゼフ・シュトラウスの「ポルカ・シュネル・・・短いことづて」op.240でした。

ウィーン市からムーティに花が贈られました。

 

この後はアンコールということになりますが、アンコール1曲目はヨハン・シュトラウス(2世)のUnter Donner und Blitz・・・雷鳴と電光ポルカop.324、そして2曲目が美しく青きドナウです。

美しく青きドナウでは演奏を始めてからすぐ止めて、ムーティが振り返って皆さんに新年の挨拶をウィーンフィルと共にするという伝統ももちろん行われました。

毎年この曲が演奏される時には、バレエやオーストリアの風景が流されますが、今年はドナウ河の最も美しいヴァッハウ渓谷の秋と雪景色が万華鏡のように映し出されました。

改めてヴァッハウ渓谷の美しさが見られる映像でした。

 

最後はもちろんラデツキー行進曲です。

 

今年のニューイヤーは何か特別なハプニングがあったわけではありませんが、ウィーンフィルと長年友好な関係にあるムーティとの一体感が良かったですね。

途中で多く流れた映像も楽しかったです。

 

もう20年以上も前に、国立オペラ座界隈でムーティが歩いていたのを見つけ、声をかけて握手をしてもらい、サインをもらったことを思い出しました。


ウィーンフィルのニューイヤーコンサートが行われる場所は楽友協会の黄金の間です。

このホールは世界で最も音響がいいホールのひとつで、ウィーンフィルの本拠地となっていて、私も年間を通してよくこのホールの案内をしていますが、ニューイヤーコンサートの時は花が飾られ綺麗に装飾されますから普段とは全く違います。

 

ニューイヤーコンサートは3回あるということはあまり知られていないようですね。

12月30日、31日、1月1日の3日間で、3日間とも同じ顔触れで同じ内容で行われますが、

1月1日だけは世界に生中継で、また他の2日間から比べればチケットも高くなっています。

 

ウィーンフィルのニューイヤーコンサートの始まりはクレメンス・クラウスの指揮で、

1939年の大晦日でした。

つまりニューイヤーコンサートではなかったわけです。

しかし、次の年1940年大晦日と翌日1941年1月1日と2日続けてコンサートが行われ、

その時からニューイヤーコンサートが始まったというわけです。

 

 

 

 

 

 

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