ドナウ運河が始まる場所にあるNussdorfer Wehr und Schleuseanlage

ウィーンで観光案内をしていると、日本のお客様からよくウィーンのドナウ河はどこにありますか、とかドナウ河を見に行きたいんですが・・・という質問をよく受けます。

ドナウの本流は街の中心を流れていないので、通常のツアーでは市内観光でウィーンのドナウ河本流を見ることはあまりありません。

逆に街の中心に流れるドナウ運河はよくリンク道路の一環で通ります。

そのドナウ運河はどこから始まっているのでしょうか?

 

ウィーンのドナウ河は河川工事のおかげでかなりスケールが大きく街を流れています。

ウィーンのドナウ河は大きく分けて4つあり、本流、新ドナウ、旧ドナウ、運河です。

 

秋のドナウ河春のドナウ河ウィーンのドナウ河にある閘門 1,

ウィーンのドナウ河にある閘門 2ウィーンのドナウ河にある閘門 3

ヨハン・シュトラウスの"美しき青きドナウ" なども参照して下さい。

 

ドナウ河の最も美しい世界遺産でもあるヴァッハウ渓谷から流れてきたドナウ河はウィーンに入る直前で本流と新ドナウの2つに分かれます。

その後まもなくして本流から運河が枝分かれしていき街の中心へと流れていきます。

右の写真はちょうど本流から運河が枝分かれする場所です。

正面に白い建物がある島のようなものが見えますが、この右側がドナウ運河で、左側が本流です。

この写真ではドナウ本流はほとんど見えません。

ドナウ河本流は本当は幅が広いのですがここでは狭く見えます。

実はその白い建物とそのすぐそばにある橋は重要な建築で、Otto Wagnerのプランによる

Nussdorfer Wehr und Schleuseanlage(ヌスドルファー・ヴェーア・ウント・シュロイゼアンラーゲ)と呼ばれています。

ヌスドルフの防御と閘門施設なんていう意味になると思います。

ヌスドルフは現在のウィーン19区の一角です。

しかし、この建築群は意外なことにウィーンの20区に大部分が位置しています。

 

 

こちらは運河に入ってすぐの橋で非常に印象的です。

橋のすぐ左に上の写真に見られる白い建物があります。

ここは、1892年7月18日に当時のオーストリア=ハンガリー帝国の帝国議会によって決められたものでドナウ運河を商業や港として利用することでの公共の船の通行場所として使用することを意図していました。

 

 

ここにはかつてオーストリアの建築家で技術者でもあるWilhelm Freiherr von Engerthが手掛けたSchwimmtorと言われたドナウ河の雪解け水によっての水量から運河を守る施設がありました。

 

これは第1次世界大戦中も使用されていましたが、1945年になって撤去されました。

 

現在の姿であるこのNussdorfer Wehr und Schleuseanlageは1894年~1899年に作られたものでOtto Wagner (オットー・ヴァーグナー)によるものです。

オットー・ヴァーグナーが責任者として手掛けたStadtbahn(シュタットバーン・・・現在の地下鉄や国鉄)の駅舎のスタイルによく似ています。

ドナウ運河を洪水や雪溶け水から守るため、(シュタットバーンや街の地下にある下水道など)そして船の通行のための十分な水を確保することから必要不可欠の計画でした。

かつてのSchwimmtorは洪水は守りましたが、十分な水量を確保できませんでした。

 

 



こちらの写真はその白い建物と橋の実際に渡る部分です。

この白い建物がNussdorfer Wehrと呼ばれているここを管理する場所であり、橋の名前はSchemerlbrückeと呼ばれています。




この橋の両端には2頭のライオンが立っています。

このライオンは古代エジプトや古代ギリシャで見られるPylonenと言われる街に入る時の城壁などの入口に見られるスタイルで、オットー・ヴァーグナーはここをウィーンの街に入る一種の城門のようなイメージを持っていました。

ライオンの土台の部分には "Viribus unitis" (皆の力を合わせて)というラテン語が見られますが、これはフランツ・ヨーゼフ1世の言葉です。

ライオン像はRudolf Weyrによるものです。


2004年~2005年にこの歴史的建造物を全く損なわないようにして、小さな水力発電が作られました。

右上の写真はドナウ運河から今度は上流方面に向かって橋を見ていますが、段差があってかなりの水量があることがわかります。

12のタービンが活躍し28ギガワット/hの電力、約10.000世帯の電気を供給しています。


また、この場所にはNussdorfer Schleuse (ヌスドルファー・シュロイゼ)という閘門がちょっと離れた所に設置されています。

現在でもSchwedenplatzから下流に向けて出発した船がドナウの本流に入って、本流を上ってこのNussdorfer Schleuseを通りSchwedenplatzに戻って来るパターンや、逆にSchwedenplatzからドナウ運河を上って、このNussdorfer Schleuseを通ってドナウの本流に出てReichsbrückeまでのクルーズ船が大活躍しています。




左上の写真はこの橋の上からドナウの上流方面を見ています。

右に2本の木が見えますが、奥の木がある場所がドナウ運河と本流の分岐点です。


右上の写真は別の角度からもう一度ドナウ本流とドナウ運河の分岐点で、1枚目の写真と比べると本流がずっと奥の方に見えています。


この場所はウィーンに相当詳しい方でもあまり訪れる機会がないでしょう。

しかしここはドナウ河本流とドナウ運河の枝分かれ地点ということで結構おもしろいです。






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