クロスターノイブルク修道院

ウィーン中心部から車で15kmぐらい走ったNiederösterreichの一角、ウィーン北の森の奥に人口28.000人程のクロスターノイブルクという小さい街があります。

ここにはクロスターノイブルク修道院という歴史的に重要な修道院が立っています。


ハプスブルク家の前に栄えたバーベンベルクという270年(976年~1246年)続いた王朝があり、この王朝時代にウィーンを始め、オーストリアの様々な地域が発展していきました。

この王朝の最初の居城は修道院で有名なメルクに置かれ、その後、東側を強化する必要性から彼等の宮廷(居城)は東へ、東へと移動し、1156年にはウィーンに宮廷が置かれ、ウィーンは中世の頃に飛躍的に発展します。

その居城がウィーンに置かれる前の1114年、レオポルド3世によってこのクロスターノイブルクに居城が置かれました。

これには有名な花嫁ヴェールの伝説にある通り、居城を移すだけでなく修道会を呼び寄せて教会を作らせ、やがて1133年にはアウグスティヌス修道会(修道参事会)に変わりました。

レオポルド3世が亡くなる数週間前、建築が始まって22年後に教会を奉納することが出来ました。


 

まずサラ・テレーナへ行きましょう。

サラ・テレーナはバロック様式のドームの下にあり、歴史を感じさせる神殿のような空間です。

ここは修道院ショップになっていてそこで入場チケットを購入し、ガイドツアーもここから始まります。

ここでは個人でも見学できますし、ガイドツアーに参加することも出来ます。

ガイドツアーはドイツ語と英語ですが、日本語のオーディオガイドを借りられるので、個人で見学してもいいですし、ガイドツアーに参加しながらその内容をオーディオガイドで聞くことができます。


2本の塔が印象的な中世の教会を含めた部分とバロック様式の部分とのコントラストが非常に面白いです。

私がここを案内する時はサラ・テレーナからエレベーターに乗ってバロックの皇帝の居城から始めます。

ここは見ごたえがある大理石の間から皇帝の部屋へと見学ルートが続きます。

皇帝の居城は大理石の間から5部屋続きます。

ここで言う皇帝とはマリア・テレジアの父であるカール6世です。

カール6世はスペインのマドリードにあるエル・エスコリアル宮(修道院)を強く意識し、このクロスターノイブルク修道院を自らの居城としてバロック化を促進させましたが、1740年にこの世を去ったため、計画がストップし、1/8までしか完成しなかったのでこのような中途半端な形になっています。

 

 

大理石の間の天井フレスコ画は1749年ダニエル・グランによるものです。

ここにはマリア・テレジア女帝や夫のシュテファン、レオポルド3世などが描かれています。

 

 

こちらは皇帝の居城で見学できる謁見の間です。

実際カール6世はこの居城に一晩しか滞在しなかったと言われています。

彼が1740年に亡くなってからは長女マリア・テレジアはシェーンブルン宮殿に力を注いだので、建築がストップしてしまうことになり、ここの重要性が失われて行きます。

その80年後に当初のプランの一部がJosef Kornhäuselによって増築されました。


 

バロック空間から皇帝階段を経由して外に出ましょう。

建物に沿って東の方へ敷地を歩くと14世紀に立てられたLichtsäule(リヒトゾイレ)が見え、この修道院の建物がバロックとロマネスクという2つの異なった様式で接続されているのが分かります。

中世の教会の横に入り口があるのでそこから中に入りましょう。

バシリカ建築ですが外観からは想像出来ないバロックの内装になっていて驚きます。

主祭壇は聖母マリアで、天井のフレスコ画も素敵です。

入り口近くにアントン・ブルックナーの記念プレートもあり、その近くに北側に扉があるのでそこから回廊に続きます。

回廊は正方形に作られていて、南東部分が1250年頃、北西部分が1330年頃作られました。

この80年程の違いは美しいステンドグラスがはめ込まれている壁の建築様式で分かります。

東回廊にはレオポルド礼拝堂があり、そこには絶対に見逃すことが出来ないヴェルダン祭壇があります

回廊を見学した後はレオポルド中庭に出て、バーベンベルクの居城が置かれた古い部分を見ながら教会の西側正面に戻ります。

 


 

私がここを案内する時にはこのワインケラーを通ってまたサラ・テレーナに戻ります。

ここに入るとワインの匂いに満たされます。


 

ヨーロッパでもこの時代を示す貴重なこのヴェルダン祭壇は51枚の七宝焼きの見開き祭壇で1181年に制作されました。

元々これは45枚からなる台形フォームで説教壇の装飾に利用されていたもので、1330年頃の火災から修道士達によって守られたもので、見開きの祭壇にするために6枚が追加されました。

10年という時間をかけて丹念に制作されたものなので、今日でもオリジナルの状態で保たれています。


クロスターノイブルク修道院へは国鉄Bahnhof Klosterneuburg-Kierling駅から650m、徒歩10分ぐらいです。

教会、中世の回廊、バロック様式の皇帝居城、宝物館、ワインケラーなど見所も充実していて、時間を使ってのんびり見学をお勧めします。