ウィーンのシンボルとも言えるシュテファン大聖堂は12世紀半ばから現在に至るまでの約870年間ずっと歴史を見つめて来ました。
それだけの歴史がこの大聖堂には詰まっているので、じっくり見るとそれなりの時間がかかり、言われあるものが数多く残されています。
その中で大変重要な石細工の説教壇があります。
この貴重な大作は、シュテファン大聖堂の身廊部分の中ほど正面祭壇に向かって左側に見られます。
このKanzel(説教壇)は、1510~1515年にかけて、Breitenbrunnner Kalksandstein・・・ブライテンブルンの石灰砂岩で作られています。
BreitenbrunnはオーストリアのNiederösterreichとBurgenland州の境に横たわるライタ山脈にある人口2000人弱の小さな街です。
この説教壇はずっとアントン・ピルグラムのものだとされていましたが、現在では彼のものではどうやらなかった・・・
ということになっています。
しかしピルグラムの作ではなかったとしても、これは中世末期の芸術的な大変貴重な物であることには変わりません。
よく見るとこれを作ったと思われる本人自らが、柱の下の所に窓から顔を出した状態で描写されています。
一番目立つ説教壇の上部には、4人の教会博士が登場しています。
アンブロジウス、ヒエロニムス、グレゴリウス、アウグスティヌスの4人です。
その4人を支えるかのように、花のように開いた部分があり、その中に支柱が床まである土台に来ています。
その支柱の内部には36cmのキリストの12使徒達が見られ、
その支柱を囲むように、4人の教会博士を支えている花びらから繋がった細めの柱が土台まで来ています。
その細い柱にはカトリックの様々な聖人達が24cmの像で見られます。
これはゴシック様式のとても貴重な素晴らしい説教壇で、細部に至るまで念入りに作られていることがわかります。
この説教壇がある場所は、大聖堂の有料見学ゾーンになりますが、是非時間をかけて観察して頂きたい、絶対に見逃すことができない芸術的大作です。